私、大学生なんですが、高校の時に友人に勧められたのがきっかけで、CHAGE and ASKAが大好きになりまして。
ところが覚せい剤で逮捕という、衝撃的かつ残念なニュースが耳に飛び込み「もう生の声を聴けることはないんだろうな」と、私は思い込んでいました。
しかーし!!!!
今回なんと、ASKAさん単独での全国ツアーが決定!
しかもオーケストラがバックにつく、というめっちゃ壮大な演奏。
彼の歌唱力なら、オーケストラの中でもひときわ際立つでしょう。
これはもう、チケットを取るしかない!!
最後に東京じゃなくて福岡なのは、彼の故郷が福岡だからかな?
そこで今回は、ライブ活動再開を記念し、100曲以上を聴いてきた私が、ぜひ皆さんに聴いてほしいオススメの曲を紹介したいと思います。
っとその前に、彼の魅力をお伝えしましょう。
高音域でのビブラートがえげつない
チャゲアス初の海外公演、"史上最大の作戦 ASIAN TOUR 1994"での音源。
「傷から辛い夜が 来る~~~」の「る~~~」は一般人から見ればかなり高い(hiC、つまり高いドの音)で、地声でこれをきれいに出せる男性は世界に数えるほどしかいないとされてます。
参考までにですが、レミオロメンの「粉雪」は一番高い「こなゆき」の「な」がhiAで、hiCよりもキーは3つ下です。
普通の男性のほとんどが撃沈する、スピッツによるロビンソン「ルーララー宇宙の風に乗る」の「ルー」がhiC#で、1つ上ですね。それぐらい高いってことです。
ASKAさんは(地声で歌ってるわけではなく)野太くて粘着質なミックスボイスが持ち味ですが、その声をここまで伸ばし、さらにビブラートをかけています。
マウントを取りたいわけじゃないのですが、ここまでの歌唱力を持った人が、今の日本にはどれだけいるでしょうか?たぶん相当に少ないと思います。
すさまじいロングトーン
本当は2分間じっくり味わっていただきたいのですが、特にすごいところが1分33秒から。
「誰の 誰の~~~」はもう絶句したとしか言いようがありません。
試しに出してみればわかるかと思いますが、普通の人はここまで息が続かないです。
私も音域だけなら合わせて歌うことができますが、このロングトーンをしていてはたぶん酸欠になります。
おそらくこの歌はASKAさんにしか歌い上げることができないでしょう。
マイクから顔をかなり遠ざけているのは、こうやってしないと音が割れてハウリング(音がキーンってなるやつ)が起きるから。逆にこんだけ離してるのにめっちゃ聞こえるの、すごくないですか。
というのを頭において、では曲を見ていきましょう。
はじまりはいつも雨
あのですね。チャゲアスといえばどうも「SAY YES」か「YAH YAH YAH」ってイメージがあるんですが、RADが前前前世だけでないように、サカナクションが新宝島だけではないように、もっと名曲がいっぱいあるんですよ。
その一つがこれ。私の母親が教えてくれました。
ミスチルの桜井さんとコラボしている動画です。
桜井さんも相当にうまいのですが、ASKAさんが歌い始めるとまた、その声量の差、声質の違いに驚かされます(桜井さんをディスってるわけじゃないです)。
やっぱりこの曲の持ち味はASKAさんにしか出せないなと。
何がいいかって、まず歌詞。
出だしが
君に会う日は不思議なくらい 雨が多くて
水のトンネル くぐるみたいで 幸せになる
サビでは
今夜君のこと 誘うから 空を見てた
はじまりはいつも雨 星をよけて
雨って、どうも陰鬱さとか、厄介なもの、みたいなイメージありません?
歌詞に出てくる主人公の悲しみとか、あるいは状況の悪化などを、雨に載せて歌う、というのは、割とよく知られた手法ですよね。
彼はそこを逆手にとった(たぶん)。
「雨」という一見してやっかいなものが、自分と彼女とをつなぐものになっており、また彼女という存在の象徴にもなっている。
それを知って聴くと、やさしいASKAさんの歌声に感情移入し、私はすっかり雨が好きになってしまいました。
太陽と埃の中で
これは確か友人に勧められて聴いた曲です。
私が趣味として歌を歌い始めたのはこの曲のおかげに他なりません。
チャゲアスは音域がかなり高いので苦労しましたが…。
「太陽と埃の中」という「と」でつないでいいのかわからない両者に、私は小学校のグラウンドを思い浮かべました。
輝く太陽の下、舞う砂埃の中で必死に「追いかけても追いかけてもつかめないものばかり」な、空を抱いたような主人公の焦りが伝わってくるようです。
「愛しても愛しても近づくほど見えない」のは、私が恋焦がれたときに初めて実感することができました。
最後の
Day and Night time
Rain and Sunshine
I seek my dream everywhere
ここでいう"dream"は字義通りの「夢」なのか、それとも愛するべき存在のことなのか。
ただでさえ高い音域のASKAさんの、さらに上を行ってハモるCHAGEさんの声にも注目です!
月が近づけば少しはましだろう
ASKAさんという「存在」を大好きになるキッカケがこの曲。
歌詞も表示されているのでぜひ読んでみましょう。
角を曲がるといつも消え失せてしまう言葉だけど
心の中では 切れて仕方ない
「切れて」ってのがすごい。
素敵なオーケストラのバックにも、全く消えてしまわない彼の歌声。
この歌詞には、「恋人も知らない一人の」孤独な男が人生で味わう苦難や苦悩などが凝縮されています。
この時期のASKAさんには音楽の神が舞い降りていたとしか思えません。
Cメロの
動きたくない体を 毛布に沈めて聞いてた
鳴りやまないサイレンの音 胸の音なのか
とか、辛くて死にそうなとき、ほんとそんなふうに実感しませんか?
病んだ時に私を助けてくれたのはいつもこの曲でした。
あと、歌唱力に紛れてしまいがちなのですが、ASKAさんの声の倍音にも注目です。倍音というのは主な周波数の倍の音のことで、例えばA4(440Hz)の整数次倍音は880Hzやら1760Hzやら。*1
平たく言えば、「主旋律以外に同時に出てくる音」ですね。
バイオリンとピアノで、同じ音程を弾いても聴いた感じが違うのは、倍音の混じり方が違うからです。倍音がない声はかなり無機質に聞こえます。その代表が時報。
「整数次倍音」が整数での倍になっている声、「非整数次倍音」が単純な整数で表せない倍音なのですが、ASKAさんは後者です。ガザガザした声なのが特徴。
人の心を掴んで離さない歌声を持つプロ歌手、宇多田ヒカルさんや桑田佳祐さんなどに見られます。
この曲の倍音はまず3分45秒、2番サビの終わりです。
「ましだろう」の「う」に着目して聞いてください。一瞬、女性が歌っているように聞こえるはずです。
このような声を出すことができる人、マジで少ないんですよ。
音域的には私も歌えるんですが、比べたら本当に彼に失礼になります。
それから6分3秒からのスキャット(?)も、かなりえげつない。
二人で歌ってるようにしか聞こえないです。
歌詞もまたすさまじい表現力で、これもう文学って言っていいんじゃないかレベルなんですが、文字数の関係で省略せざるを得ません。
in my circle
ASKAさんの歌詞は恋を歌ったもの、生活を歌ったものに分けられます。
生活を歌ったものの中で最も好きなのがこの曲。
輪廻という題材は割とありふれています(スピッツの「青い車」とかね)が、自分の暮らしだけがえらく「きれいな円にならない」という嘆きを、しんみりとする声質で歌い上げるのがASKAさん。
昨日の雨が街を洗って 川を流れてゆく
いつかは僕の差し出すコップの水になっている Ah
長い長い列をつくった アリが季節を越えてゆくよ
僕はと言えば冬の支度もできてないけど 歌を歌うよ
ここだけ取り出すとかなり過激ですね。普通の人達……サラリーマンをアリにたとえ、自分をキリギリスに例え「冬の支度をしないままで歌っていていいのか」という自虐をしているようにも見えます。
それでも彼はのちに
歩道の端を落ちないように歩くのが好きだ
腕を広げて片足ごとに僕のバランスで Ah
時々色を塗り換えながら 電車が僕のホームに来るよ
やっとどこかで繋がりながら ガタゴト揺れる 線を描いて
と、バランスが普通と違ってて、いびつな円にしかならない自分の暮らしを、「やっとどこかで繋がりながら」と、残念だけど愛するべきものとして、肯定しています。止揚に至るまでの過程が見えているのが面白いですね。
これほどに文学的な歌詞を、それにあった声でしっとりと歌い上げる彼の歌唱力に、もはや嫉妬の念さえも浮かびません。
TRIP
こっちは「恋」についての歌。
"concert movie GUYS"に収録されています。今音源を購入しようと思ったら、新品で3万円ぐらいします。
失恋して傷ついた少女が、夜のアヤシイ街に吸い込まれ、「しゃらしゃら涙も乾かないうちに また恋の迷路 手を引かれてゆく」という歌です。「しゃらしゃら」という変な擬音が、曲の怪しさにマッチしているのがなんともニクい。
聴いていただきたいのは4分57秒からのスキャットです。カラオケに行ったらここ必ず真似して、ドン引きされます笑
これだけの歌唱力を贅沢にも、歌詞のない部分に当てるのか…と思いますが、むしろ歌詞のない部分にこそ、感情や思いが込められています。
スキャットといえばジャズですが、ASKAさんへのジャズの影響は少なからずあると思いますし、確か本人もそう語っておられたような。
no no darlin'
とりあえずサビまで聴いていただきたいのですが、最初に聴いたときの「多幸感」が半端じゃなかった曲です。これほどまでに歌いやすい(音域的には高いけど)のに、これほどまでに幸せになれる旋律が、この地球上にまだ残っていたのかと、驚きを隠せませんでした。
CHAGEさんのハモリや多くの楽器の力もあって、感動的なものに仕上がっています。この曲が確かライブのエンディングだったかな。
歌詞もまたすごく優しい。
いつも僕だけが悲しませてごめんよ と謝る男と、いつも二人でやってきたじゃない とそれに答える女、そんな二人の純愛を歌い上げる、アマアマな曲です。
こんな風に互いに愛し合える相手と生涯を遂げたいものです。
雨の向こうに広がる空を いつも二人で呼んできたじゃない
言葉よりもやさしいお花を いつも二人で育てていこうよ
世の中の全てのものに感謝できるような、穏やかな気持ちになれます。
その他
文字数の都合上ここらへんで切り上げますが、「WALK」「はるかな国から」「僕はこの瞳で嘘をつく」「You are free」「HANG UP THE PHONE」「めぐり逢い」あたりは、カラオケに行って必ず歌う十八番です。
興味があれば、ぜひ聴いてみてください。
ああ~~ツアー楽しみだ~~眠れねえ~~~!!
これでまた、生きる理由が一つ増えました。
追記
そういえばASKAさんってはてなブログでしたね。
aska-burnishstone.hatenablog.com
ツアーのことも記事に書かれていらっしゃるので、紹介しておきます。
*1:正確な説明ではないので詳しくはググってください