ちしきよく。

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言語の『優劣』【その1】



あとで読む

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日本語は最高なのか?英語が最高なのか?

今日は久々に知識系の記事をまとめてみようと思う。

 

この間、こういうことを言っている人がいた。車内の会話の盗み聞きなのだが。

『日本語ってマジ最高じゃね?』

 

ちょっと思うところがあったので記事にしてみた。今日はこの命題について考えようと思う。

「どの言語が最高なのか」

またはこうともいえる。

「言語に優劣はあるか」

 

たまーに2ちゃんねるの言語板で交わされ、まとめサイトにもまとめられており、コメント欄では決着もつかないまま終わってしまっているので、題材としても割といいだろう。

 

そして私は面倒臭がり屋なので、最初に「優劣はない」と答えておこう。

それだけだと「優劣ある派」のひとたちから反感を買ってしまいそうなので、今から2回に分けて理由も述べていく。

 

 

「優劣」とは

さて、この記事をお読みの方の中には、「日本語が最高」とか「中国語より英語のほうが簡単」みたいな、どこかの言語とどこかの言語を比較した帰結としての価値観を持つ方もいらっしゃるに違いない。

私は以前そう考えていたフシがある。

趣味でロシア語をやっていたのだが、どうもあの煩雑な文法に慣れなくて、自分のアタマが悪いことを棚に挙げ、「ロシア語は難しい言語だし日本語より使いづらい」なんて友人に語って回っていたかな。確か。ロシア語がどれだけ難しいかは後日話そうと思うけど。

 

確かに日常会話ならそれで済むかもしれない。だが、私は一般人と比べてもかなりめんどくさい部類に属する人間だと自負しているから、友人と語るときも必ず「前提」を決めるようにしていた。

つまりだ。

 

優劣とは何か

 

という前提である。これがないと議論が進まない。

 

例えば皆さんにこう尋ねるとしよう。

「リンゴと野球どちらが上ですか」

と。

皆さんはどう答えるだろうか。ある人は

「食べられるからリンゴが上」と言い、またある人は

「俺、野球嫌いなんでリンゴかな」

と答える。もしかしたら

「うーん、野球はみんなが幸せになれるから野球かな」

なんて人もいるかもしれない。あ、老婆心だけど、政治と野球と金の話は人前で(特に居酒屋では)しないほうがいいぞ。荒れるから。

 

話が逸れた……。

だが、大多数の人はこう思っているに違いない。

果物とスポーツ、比較できんやんけ!

と。……だよね?

 

そう、言語の話になれば、意外と皆さん見落としがちなのだ。

 

比較をする場合には、必ず共通項が必要という事実を。

 

言語の話もそれと同じなのだが、どうしてだろう、現実やネットで交わされる言語優劣論争に、そういう「前提」を持ち込もうと提案する人はあまりいない。残念なことだ。

 

ここでの前提はずばり。

 

どういう項目(共通点)で言語を見るか

 

にほかならず、ここを無視してどっちが優れているか劣っているか議論することは不可能であろう。

 

つまり、「言語」という非常に大雑把なくくりだけで優劣の比較をするのは大変だから、どういう面で言語を比較するか、という事項を最初に決める必要があるということだ。この定義はできるだけ具体的に行うべきである。

 

とはいえ、比較をするには客観性が必要だ。極論「俺はリンゴよりモモのほうが好きだ。よってモモのほうがスバラシイ果物だ」なんて言う人を見かけたら、議論を吹っかける気にもならない。

 

だが、とりあえず優劣について議論する前に、言語が持つもの……文字とか発音とか、そういうもので、客観的に比較可能なものから見ていくとしよう。というか今日はそこで終わりです。

 

文字の多さ

例えば、文字の多さで見てみよう。世界一文字の多い言語は何だろうか?

 

今発見されている中で言えば、中国語が一番多いのだろうか?

 

http://www.nii.ac.jp/userdata/shimin/documents/H23/111005_4thlec02.pdf

という、国立情報学研究所のpdfによれば、コンピュータ入力で使う漢字コードに定義されているのは、およそ7万5千文字だという(ただし、このpdfが作成されたのが2011年なので、現在はもっと増えてるかも)。

中国語といっても、繁体字と簡体字に分かれ、前者は書き順の多い、一言で表すと複雑な漢字、後者は簡単な漢字を使う。

 

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つれづれチャイニーズ 簡体字と繁体字より引用

 

ちなみに、台湾やマカオや香港で使われるのが繁体字、中国本土はだいたい簡体字である。

 

中国語といっても、この二つをどう扱うかで決まるだろう。合わせて中国語と言い張るなら、恐らく世界で最も文字の多い言語は中国語になるが……。

 

ちなみに、日本語は恐らく中国語より漢字は少ないと推察される。ひらがなカタカナがあるため、表現にそんなに多くの漢字を使う必要もなく、日本という狭い国でしか日本語は話されていないので、中国語のように異字が生まれることもない。

 

トップはわからんが、一番文字が少ない言語ならニューギニアで話される少数言語、ロトカス語だろう。なんと母音5つ、子音6つしかない。

日本語で例えるなら、あかさたなはま……まの行までしか使えない(厳密には違うが)。

 

まあだから、中国語よりはロトカス語のほうが文字の数が少ない、といえる。これは客観的だ。

 

性の多さ

大学などで第二外国語、特にヨーロッパの言語を学んでいた方ならお分かりかもしれないが、それらの言語にはたいてい「性」という概念がある。

 

名詞……つまりモノの名前を示す語に、「性」という概念がある言語は多数存在し、ヨーロッパの言語の場合、たいていは「男性」と「女性」(ロシア語やポーランド語やドイツ語は「中性」もあるが)である。

 

ロシア語で例を挙げてみよう。ロシア語の「雑誌」はжурнал(ジュルナール)であるが、これは男性名詞だ。「広場」は  площадь(プローシシャチィ)で、これは女性名詞。

「時間」время(ヴゥリェーミャ)は中性名詞。

 

え、雑誌ってオトコが読むものなの?

広場ってオンナのためのものなの?

時間ってオカマなの?

 

などとは思わないでほしい(笑)

性とは文法上の概念であり、必ずしも現実世界の性と対応しているわけではない。(対応しているものもありはするが……。ママは女性名詞で、パパは男性名詞など)

日本語には性がないので理解が少し難しいが、ごくごく簡単なものでいえばHeは男性で、Sheが女性……みたいなのが、他のふつうの名詞(りんご とか メガネ とか)にもあると思えばいい。

 

そして、文法上の性は、単語のカタチに影響を及ぼす。例えば同じ形容詞であっても、男性名詞につくときの形と、女性名詞につくときの形は異なる。例を挙げてみる。

 

赤い本と言いたい場合、「赤い」はロシア語で"красный"(クゥラースヌゥィ)だが、本(книга,クニーガ)にそのままくっつけて"красный книга"としていいわけではない。

まあつまり、英語とは要領が違ってて、そのまま"red book"としていいわけではない、ということだ。

 

なぜなら、красныйは男性名詞専用の形であり、女性名詞である本にくっつけるには、形を変える必要が出てくるからだ。正しくはкрасная книга(クゥラースナヤ)となる。

だが、男性名詞であるстол(ストール、机)になら、そのままくっつけてもいい。

 

というように、煩雑な性の概念が、その言語を成り立たせているのだ。

 

ちなみに、ロシア語の場合はこれが男性・女性・中性・複数(複数は性ではないが)の形で、さらに文章のどの部分にその名詞がくるかどうかでも全部形容詞の形が変わるので、いろいろとかなり面倒です。1つの形容詞につき24個の変化があるので全部覚えましょうね。

 

 

英語には性がないと思われているが、実はある。

船や都市を代名詞にして呼ぶとき、"she"とか"her"とする。船や都市はモノなのに、彼女と呼ぶのである。これに本来「女」の意味はない。

実は英語には性があったが、長い長い歴史の中で、簡略化、合理化の波に飲まれて消えてしまった。その名残がそれだ。だから今でも「姉妹都市」「処女航海」なんて言い方をする。これらのことばはかつての英語を訳したものだからだ。

 

ヨーロッパ系の言語にはだいたい性がある。2つ、または3つ。

 

だとすれば3つが最高だと思われるかもしれないが、これは違う。

Dyirbal language - Wikipedia

Dyirbal language 日本語で「ジルバル語」と呼ばれるその言語は、オーストラリア先住民であるアボリジニの言語だ。

 

The language is best known for its system of noun classes, numbering four in total. They tend to be divided among the following semantic lines:

I - most animate objects, men
II - women, water, fire, violence, and exceptional animals
III - edible fruit and vegetables
IV - miscellaneous (includes things not classifiable in the first three)

その言語(ジルバル語)は名詞分類の仕組みで最も有名で、全部で4つある。(中略)

1.ほとんどの生き物、男

2.女、水、火、暴力、そして他の動物

3.食べられる果物や野菜

4.その他(最初の3つに分類できないものも含む)

 

つまり、男性名詞、女性名詞、中性名詞、食性名詞……?の四つからなっているのだ。

ここでは紹介しないが、ザンデ語という言語も4つの性を持つ。

 

ただ、もっと性の多い言語であれば、

Fula language - Wikipedia

その数は25にもなる。

 

残念ながら(?)、日本語や中国語や韓国語には性がないので、理解することは難しいが、とりあえず「実物としての性と文法の性は必ずしも一致しない」ことがおわかりいただけただろうか。

 

 

他にも単語の多さとか代名詞の数とかいろいろあるが、それは次回見て行こう。

とりあえずはこういう「客観的なもので言語を測ろう」という視点をインストールしていただければ、十分次回の議論にもついてこられると思う。

 

それでは。

 

 

追記:ロシア語の発音に参考としてカタカナを振っておいたが、これは正しい発音ではないので悪しからず。