ちしきよく。

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ドイツ人の赤ちゃんを日本人のおじさんが泣き止ませた日



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最近忙しいので、知識系の記事を書くヒマはないが、代わりにこの前遭遇した「夢のような話」について語っていく。あ、ほんとの話ですんで。保証しようはないけど。

 

 

近くの銭湯施設でのこと。

 

私が岩のおフロ(露天風呂)に浸かっていたら、白人で鼻と背がすごく高い、かなりイケてる男の人が、赤ちゃんを抱いて入ってきた。抱いてってのは背中におんぶじゃなくて、普通の抱き方ね。

 

「oh~すっごい背の高さ……」

と思っていたら、後を追うようにクソガキたちも入ってきた。

日本語しゃべってたから別に男の人の子どもでもないと思う。

 

 

子どもは好きなんだけどクソガキと呼ぶのは、このクソガキ3兄弟がすごく騒がしかったからだ。

 

湯船にタオルを付けるのはもちろん、泳いだり、お湯を互いに掛け合ったりしている。

端的に言えば騒がしい。かなり。

 

「あ~あ、なんかもったいないなぁ、せっかくゆっくりできると思ったのに」

と考えながらも、近くに親がいないかキョロキョロしていたら、その赤ちゃんがぐずりだした。見たらすっごくかわいい顔。ムー〇ーマンのCMに出そうなくらい目がくりんくりんしている。なんで外人さんの赤ちゃんってこんなかわいいんだろ。

 

 

だがそのうち、泣くのも本調子になり、露天風呂に赤ちゃんの大きな泣き声が反響しはじめた。

私はいよいよ不機嫌になり、「なんだこりゃ……。全然ゆっくりできないじゃないか……」と思っていただけだった。

恥ずかしながら、赤ちゃんをあやしてあげようという発想はなかった。

(まああったとしても行動に移せてないだろうし、泣き止んだかどうかもわからんが)

クソガキたちはタオルで水遊びもほどほどに、またどこかに走っていった。

みんなにいい迷惑だ。

 

 

ドイツ人と思われるそのお父さんは、ドイツ語に聞こえる(オランダ語かも)ことばで、赤ちゃんをどうにか泣き止ませようとしていた。ドイツにもそういうのあるのかしら。

「へぇ~赤ちゃんをあやすときには母国語出るんだ~面白ーい」なんて、全くよくわからんことを考えていた私なのだが、その思考を止めたのは、同じく岩風呂に浸かっていたオジサンだった。

 

オジサンってか、おじいさん?白髪が混じった髪の毛はお湯で濡れてぺちゃんこになっていて、薄く見えたし、顔に刻まれたしわが、彼の生きてきた長さを物語っていた。

正直それ以外は覚えていない。彼が発した言葉が衝撃的だったのだから。

 

 

「泣きよるんか、ちょっと貸してみい。」

 

 貸して……?赤ちゃんを貸してっていうか普通?とかそういう普通なツッコミはともかく、私はこのおじいさんに目が釘付けになった。

ドイツ人の赤ちゃん借りて何すんねん。

 

と思ったら。

 

 

いないいないばあは世界共通!?

なんと、抱っこされたままの赤ちゃんに対し、

「いないいなーい、ばあっ!」

「いないいなーい、ばあっ!」

 

何度もそういいながら、いないいないばあを繰り返すのだ。

 

 

私の頭の中は彼の行動に対するツッコミでいっぱいだった。

 

『いやいや待て待てお前それいないいないばあって日本語やんけドイツ人の赤ちゃんになんで通じると思うとるんや絶対こんなので泣き止むはずが』

 

 

泣き止んだ。

泣き止んだよ。

 

 

赤ちゃん、泣き止みました。

先ほどまでの大きな泣き声はどこへやら、上機嫌そうに笑っている。

 

「通じたんかーい!」

 

ドリフばりのツッコミをして、お風呂の中で犬神家のポーズを取りそうな私だったが、彼の機転と勇気に敬意を表したのだった。

 

困惑と感謝の気持ちが半分ずつのお父さんに対して、

「こうやってすれば泣き止むよ」って言ってたけど、あれ伝わってたのかな。

 

おじいさんはそれだけ言って、そそくさと上がっていってしまった。

 

ドイツ人のお父さんもその時から見てないから、「日本語わかるんですか」とも聞けないし、ちゃんと伝わったのだろうか……?

 

 

でも、伝わったかどうかが問題じゃない、って、私はその時強く感じた。

 

 

人間に普遍的なモノだって、あるんだ

当たり前の話だけど、赤ちゃんはまだことばを知らないのだ。

だから、「いないいないばあっ」という文字列、一連の音素が、「日本語において、幼児を泣き止ませるのに使われるおまじない」である、ということは、わからない。

ただ、音の繋がりとしてそれを認識するだけ。

 

人間は成長とともにことば、そしてコンテクストを学んでいくから、そういうことをいちいち認識したりはしないけれども、でも、誰だってそういう時期があったはずなのだ。

 

裏を返せば、日本人だって、アメリカ人だって、中国人だって、ロシア人だって、ドイツ人だって、みんな最初は「何も知らなかった」のだ。

つまり、「どの国籍であるか」というのもだけど、「どの言語であるか」というのも、赤ちゃんにはまだ関係がない、というか、わからない。

 

ということは、「いないいないばあ」という、我々からすれば「それ日本語やんけ!」という音の組み合わせが、ドイツ人の赤ちゃんに通じて泣き止んだって、何ら不思議ではないはず。

ことばを覚えてない赤ちゃんにとっては、そのアクションと声自体が面白いのであり、人種も、国籍も、ことばも、あらゆるものから解き放たれている。

 

ことばを話せない赤ちゃんは、実はことばから一番自由なのかもしれない。

 

 

すごく当たり前のことだけども、とても面白いなと思ったのでこうやって記事にした。

 

ほんと、おじいさん、GJ。

 

 

 

 

そして、同様に、ことばは違えども、やはり共通するのが、子どもを泣き止ませるときのまじないのことばである。もしかしたら人間に共通なのかもしれない。

 

「痛いの痛いの飛んでいけ」

これだけじゃ物足りないので、世界中に共通するであろうおまじないことば、「痛いの痛いのとんでいけ」について、紹介してみようと思う。

調べてみると、たくさんの国が、「痛いの痛いのとんでいけ」に値することばを持っているらしい。

 

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英語でも痛みってのは向こうからやってくるものらしい。go awayは「飛んでいけ」とまあ同じ感じのニュアンス。

この後"come again another day"(また別の日にやって来て)となることも。

来なくていいから。

 

 

 

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Hokuspokusというのは向こうで通じる「魔法のことば」。アブラカダブラみたいなもんかな。

日本で言えば「ちちんぷいぷい」なので、こうした。weg ist以降は倒置法?

 

 

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ロシアはまあまあひどい。ネコやイヌに痛みを移そうとする。

ロシア語やったことある人ならわかると思うけど、韻を踏んでて面白い。

無理やりカタカナにしてみる。

ウコーシュキ ボーリ ウサバーキ ボーリ アウ( )ザズィーヴィ

全部最後がイの音で終わっているのだ。

こういうことば遊びのようなものも使われることがある。

 

 

こうやって作るのも面倒だな~と思ってたら、いいCMを見つけてしまった。

テレビで見たことがあるかもしれない。ニプロのCMである。

 

ニプロのCM|一般の皆さまへ|NIPRO-ニプロ株式会社- 「その技術は、人のために」

 

「誰かを元気にする魔法のことば。世界中にあるそうです」
CMでは、さまざまな国の看護師さんがその言葉を使っています。
アルゼンチン(スペイン語)
「Sana, sana colita de rana, sino sana hoy, sanará mañana. (治れ治れカエルのおしり。もし今日治らないなら明日治れ)」
フィリピン(タガログ語)
「Aray aray umalis ka.(痛いの痛いのどこかいけ)」

 

スペイン語のもやっぱり韻を踏んでいる。ローマ字読みしてみよう。だいたいがaの音で終わっているはずだ。

 

 

でもまあ基本的に、「『痛み』という具体性を持ったものが、向こうに行ったりこっちに来たりする」という考えは同じで、興味深い。

 

 

 

きっと、書きことばがなくて滅んでいった無数の言語にも、かろうじて現存する話しことばだけの言語にも、こういうことばが……母親が自分の子どもをいたわってかけることばがあった・あるに違いない。

 

おじいさんの「いないいないばあ」に、そんな無数のことばたちが、今重なる。